道端が散った桜の花びらで薄桜色になります。次いで緑のカーテンを迎え、その上を蝶がハラハラと散り薄紫色に季節は色を変えていきます。 そして五月の終り頃には鳥の子の囀りとともに小さな花びら、というより小さな花が無数に落ちています。何だろうと拾い上げてみれば、すずらんの花をぽってりと太らせたかんじのする、そうそう、折り紙でつくった紙風船をふくらませたような花でした。 最初は何の花びらだか全く見当がつかなかったのだが、それが落下していること自体には何の不自然さもありません。もう一度その花を見返してみると、花弁が全体的にやや四角いことに気づきました。 そう、柿の花をミニチュア・サイズにした形をしているのです。 柿の花だったのか、と解るまでに何と間のあったことか、自分でも不思議な気持ちになります。
こういうふうに知らない産物に出くわした場合、一つでも何かしらヒントがあれば、それが何ものであるのか正体に気づくこともあります。水や枝の様子、葉の形やつき方、花や果実の形、匂い、色などで共通の部分をたどってゆけば良いのです。 柿の花が柿の実に似ているように、オリーヴの藷は采実の形に似ているし、レモンの花弁には、レモンの采爽の炎皮にあるようなテンテンがあります。
しかし、何のヒントもなく広辞苑のような植物図鑑をめくっても、まったくお手上げの状態のものであったことでしょう。あまり執ような探求心がないもので、それはそれで'脳の片隅にころがしておくでしょう。そうするとあるとき何かのきっかけで、ああこれはこういう名前の植物だったのだな、と判明することも少なくありません。 そう思うと、雑然と過ごしている時間が長いようでも、少しずつ知識は更新されているということかもしれません。