何はなくとも眺めているだけで心が満たされてゆくような風景があります。 昔ながらの明るい街並みが続き、海が爽快に広がって、太陽が空にサンサンと輝くナポリの街です。 こんな土地で育まれた人々が、陽気でおおらかなのはきっと自然なことなのでしょう。 女はしっかり者で情が深く、にぎやかで明るい家族の中心として家庭を切り盛りしています。 男は甲斐性なしで意気地がないけれど、何となく憎めない色男ばかりです。 ナポリが舞台の映画では、そんな男女がイキイキと踊り回っています。
『ひまわり」では愛する人を戦争に行かせまいと、あれこれ作戦を練るナポリ女(ソフイア・ローレン)が頼もしい存在として光っています。「もう離れたくない!」という愛の引力で男を引っぱっていくのです。 「昨日・今日・明日」の中でもアデリーナ役のソフィアは、職のない夫を養うためにヤミ煙草を売って暮らす働き者でした。 夫はそんな妻のために愛を込めてセレナーデを歌います。 お金なんかなくても夫と愛し愛される生活、ただそれだけで、アデリーナは太陽のように美しく、毎日、幸福に輝いて生きていけるのです。
この生き方はどこかに見覚えがあります。 それは以前に行った沖縄でのことです。 奥さんは元気にテキパキ働いて、旦那さんは三味線で唄を歌って泡盛を飲み倒れるだけです。 私が泊まった民宿のおじさんも気にしている様子はなかったが、夫婦仲良く幸せそうでした。「まあ良いじゃないの」と明るく笑い唄を歌って楽しむ姿には、人間の余裕ってものを感じました。 美しく豊かな土地に生まれた人は、人生の基本的な幸福をすでに知っているのです。